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串本銘菓
たいもなか |
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串本民話 目なし鯛
昔は串本から魚を大阪まで運ぶのは大変じゃった。
和船に帆をまいて、東風の風を受けて、潮岬や日の岬の難所を乗り切るのにヘコまいた。
おまけに夜になると、岬々のタヌキがやってきてのう。
化かされて同じとこを行って来たり、大阪に着いたら魚がカンコの中になんにも無かったり。
タヌキの中でも、淡路の芝右エ門と加太のなんとかが、一番どもならなんだ。
ある年、おじいさんらが鯛をゴッソリ積み込んで大阪に出向いた。
難所を乗り切って、加太のハナを曲がった。泉州の灘は静かで、みんなドウマで眠っていた。
おじいさんは芝右エ門の出てきそうな晩じゃと思って、舵をもっていた。
やれやれもう一息で大阪じゃ、カンコの中じゃ大丈夫やろかと見て回った。
どれもこれも鯛の目がなくなってる。
「おうい、みんな来い」と呼びおこし、隅にうずくまっていたタヌキをつかまえた。
「おのれは芝右エ門じゃな。いつも悪さばかりしよって、今度はもうゆるさんぞ」
ほいたら芝右エ門がいうた。
「今度だけは勘弁してくれ。そのかわり、必ずお前にもうけさいたる」
ちょうどその年は上方はホウソが大流行で、みんなふるえとった。
芝右エ門は朝の大阪の町を走って呼びまわった。
「紀州の目なしダイはホウソの薬じゃ、紀州の目なしダイはホウソの薬じゃ」
なんと飛ぶように売れた。
「しかもいつもの3倍も値がしてのう」おじいさん大もうけして串本へ帰ったそうな。
それからは芝右エ門も悪さに来なかったそうな。 |
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